レインボーメタルをつくってみた!

世の中には118種類もの元素があります。
もちろん、天然に存在するものもあれば人工的につくり出したものもあります。

私たち高純度化学研究所は材料提供メーカーとして、ガスや放射性元素を除く、70種類にも及ぶ元素を日々提供し続けています。
もちろん、単元素以外にも、2元、3元、4元・・・といった様々な化合物、合金も作っています。

そんな高純度化学研究所ですが、
今回は少し趣向を変えて、金属の『色』について実験したことを報告します。

たとえば、この元素ですが、何だかわかりますか?

左からAu(金)、Ag(銀)、Cu(銅)です。

なぜ、こういった色に見えるのでしょうか?
不思議ですね。

金属の色

金属の色は金属の表面に当たる光のエネルギーをどのくらい反射、吸収するのか?で決まります。可視光線のうち特定の波長領域の光が金属表面で反射され、また、熱エネルギーとして吸収されるのですが、その反射される光を私たちは見ているというわけです。

金、銀、銅の可視光線領域での光の反射率を下図に示します。

金は緑~赤の光を多く反射します。その結果、黄金色に見えます。
銀は可視光線全域の波長の光をよく反射するので銀白色に見えます。
銅は紫、青、黄色といった光りに比べて赤色の光りを強く反射するため赤褐色に見えるのです。

つまり、金属が(ここでは3種類しか挙げていませんが)それぞれ特有の波長の光りを反射・吸収する結果、色として見えるということです。(ちなみに、黒色というのは、光りが全て透過しているか、吸収されて反射がない状態を言います)

では、単一金属ではなく、合金の場合はどのように変化するのでしょうか?

実験をしてみました。

レインボーメタルをつくってみた

Au、Ag、Cuほど他の金属と比べて、色味の違いがはっきりしているものはありませんね。でも銀色に見える金属でも、合金になれば著しく色が変化するものがあります。

その典型的な例が、Ni(ニッケル)とAl(アルミニウム)の合金です。
β相のNi-Al合金(45~60atm%Ni)では虹のように色が変化することからレインボーメタルと呼ばれているのです。

(図:合金相の状態をイメージしたもの)

古い文献になりますが、An X-Ray Analysis of the Nickel-Aluminiumn System[1]によると下表のような色の変化を示すそうです。
たとえば、48.4atm%NiはPeacock blueとなっていますが想像がつきませんね。

Atomic% Ni Color
45 Silver grey
45.25 Choromium
46.6 Metallic blue
48.4 Peacock blue
48.9 Azure blue
49.6 Sea green
49.8 Sea green
51.45 Blue-grey
53.2 Indigo-grey
54.55 Mauve-grey
57.7 Pink-grey
60.1 Yellow-grey
60.3 Yellowish

 

実際にNi-Alを溶解

サンプルとして4つの組成を選びました。

Atomic% Ni Color
48.4 Peacock blue
49.8 Sea green
57.7 Pink-grey
60.3 Yellowish

溶解後のインゴット形状が、直径30 mm、厚み10 mm 程度になるようにNiとAlをそれぞれ秤量しました。質量は組成にもよりますが35 g程度です。

次に、弊社にあるアーク溶解炉を使って均等に混ざるように表裏を1回ずつ溶解しました。

 

原料に使用したNiとAl。そして、実際につくってみたNi-Alインゴットはこちら↓

原料: (左)Al  (右)Ni

左から 48.4atm%Ni 49.8atm%Ni 57.7atm%Ni 60.3atm%Ni

原料に使ったNiとAl、それと、溶解後の合金の色味はどうでしょうか?
合金の表面は白い酸化膜(恐らくアルミナ)が点在していますが、溶解の前後、それぞれのインゴット間で色味が変わっているのが分かりますね。

今回はここまで。
次回はこれらの合金インゴットを割って、内部の色を確かめたいと思います。

次回をお楽しみに!

参考資料:
[1]A.J.BRADLEY, A.TAYLOR  http://rspa.royalsocietypublishing.org/

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