| ウランは原子番号92の元素で,超ウラン元素の発見(1951年にネプツニウム(93Np),1952年にプルトニウム(94Pu))以前は原子番号,原子量が共に最も大きい元素でした。 ウランは核燃料,核兵器のほかに,密度が大きいことから船舶用バラスト,対戦車砲弾(劣化ウラン弾)にも使われました。さらに,蛍光を発する性質を利用してガラスや顕微鏡写真撮影用染色剤などに使われます。 |
ウラン鉱物とその美しさ
ウラン鉱物のうち,ウランの供給源として重要なものは閃ウラン鉱(Uraninite,組成はUO2)で,熱水鉱床やペグマタイトから産出します。ウランは地球の表層部に多く,太陽系の地球以外の惑星の平均的組成よりも約100倍多く濃縮されているとされます。なお,閃ウラン鉱にはほとんどの場合+Ⅵ価のウランや微量成分も含まれます。
また,組成式は水和水を含めてUO2+x・nH2Oと表されることもあります。
ウランの原子価は,還元的な条件下では通常は+Ⅳ価ですが,容易に酸化されて+Ⅵ価になります。+Ⅳ価イオンは水に難溶性ですが,+Ⅵ価イオンは水によく溶け,その代表は黄色のウラニルイオン(UO22+)です。ウラン鉱床は,地表近傍の酸化的環境にあるウラニルイオンまたはその錯イオンが地下水などに溶け込んで移動し,何らかの原因で還元され,主に酸化ウラン(Ⅳ)(UO2)として沈澱して形成されたと考えられています。海水中にはウランが約45億㌧存在すると見積もられ,鉱石として利用可能な量に比べると約1000倍多いとされます。
ウランの大規模で高品位な鉱床では,一次鉱物はほぼ閃ウラン鉱で,多くの二次鉱物は閃ウラン鉱から生成したものと考えられています。二次鉱物とは,既存の鉱物の分解などによって生じる鉱物のことで,次成鉱物とも呼ばれます。天然のウラン鉱床には,ウランの放射性崩壊で生成した元素が含まれることが多く,また,ウラニルイオンのイオン半径がトリウム,カルシウム,イットリウムなどのイオンと同程度であるため,これらのイオンと置換した結晶が含まれることもあります。
ウラン鉱物には+Ⅵ価のウランを含むものが多く,100種類以上が知られています。ウランの二次鉱物には特徴的で鮮やかな色彩を呈するものがあり,それはウラニルイオンによる可視光領域の吸収によると考えられています。以下にいくつかをご紹介します。
キュリー石(Curite,組成はPb2U5O17・4H2O)は,橙色の針状結晶で,夫妻の功績に敬意を表して名付けられました。次の写真は二次鉱物を含む閃ウラン鉱で,黄色い部分もウラン鉱物の一種でシェップ石(Schoepite,組成は(UO₂)₈O₂(OH)₁₂・12H₂O)です。キュリー石と同様,色彩が鮮やかです。

閃ウラン鉱と二次鉱物(コンゴ民主共和国産)
〔左・黒色〕閃ウラン鉱
〔中央と上・黄色〕シェップ石
〔右・緋色〕キュリー石
出典:Rob Lavinskyによる
”Schoepite-Curite-Uraninite-214949.jpg”
ライセンスはCC-BY-SA-3.0
(WIKIMEDIA COMMONSより)
フランスの化学者M.キュリーは,夫のピエールと共に,ヤーヒモフ(Jáchymov,チェコのボヘミア地方西部)産のピッチブレンド(Pitchblende)からラジウム(88Ra)を発見しました。
ヤーヒモフは,旧・ボヘミア王国の町で,1945年まではヨアヒムスタール(Joachimsthal,「聖ヨアキムの谷」の意味)とドイツ名で呼ばれていました。16世紀に銀鉱山が開かれると鉱業が栄え,鋳造されたヨアヒムスターラー銀貨はターラー(ターレル)と呼ばれました。ターラーは,アメリカなどの通貨ドル(dollar)やスロベニアの通貨トラール(tolar,1991年から2006年まで使用)などの語源にもなりました。
グリム童話には『星の銀貨(Die Sterntaler)』という話があります。-貧乏ながら素直で信心篤い女の子は,野原や森を歩いて行くうちに出会う人から都度都度請われ,最後には身に付けているものまで全てを与えてしまいました。すると,空の上から星々がばらばらと落ちてきました。それらは白銀色に輝くターレル銀貨だったのです。女の子は銀貨を拾い集め,一生豊かに暮らしました。
キュリー夫人のミドルネームはスクロドフスカ。そのミドルネームに因んで命名されたスクロドフスカ石(Sklodowskite,組成はMg(UO2)2(HSiO4)2・5H2O)は明るい黄色の鉱物です。1924年に,当時世界で唯一のウラン産出地であったコンゴでドイツの鉱物学者A.ショープによって発見されました。銅を含む銅スクロドフスカ石(Cuprosklodowskite,組成はCu(UO2)2(HSiO4)2・6H2O)も知られています。

〔左〕石英(白色)中のスクロドフスカ石(メキシコ産)
出典:Rob Lavinskyによる”Sklodowskite-Quartz-47198.jpg”
ライセンスはCC-BY-SA-3.0(WIKIMEDIA COMMONSより)
〔右〕銅スクロドフスカ石(コンゴ民主共和国産)
出典:Rob Lavinskyによる”Cuprosklodowskite-180979.jpg”
ライセンスはCC-BY-SA-3.0(WIKIMEDIA COMMONSより)
ウランの発見
フランスが革命に明け暮れていた1789年,ドイツの化学者M.クラプロートは,ピッチブレンドの研究を始めました。ピッチブレンドは熱水鉱床から産するため結晶水が多く,ピッチ(コールタール)のような外見をもつことから名付けられました。塊状でブドウ(葡萄)のような凹凸の表面が特徴的で,瀝青ウラン鉱とも呼ばれます。ピッチブレンドは閃ウラン鉱の結晶度が低い変種ですが,ウランの発見以前には,化学者や鉱物学者たちは亜鉛と鉄の鉱物と考えていました。
クラプロートは,ピッチブレンドを硝酸で溶かしてから水酸化カリウム(KOH)で黄色沈澱をつくり,それを炭素で還元して金属光沢を有する黒色粉末を得ました。クラプロートは,それを新元素であるとしてウラン(Uranium)と名付けました。その名前は,反射望遠鏡を自作し掃天観測を行っていたイギリスの天文学者のW.ハーシェルが1781年3月に発見した惑星の天王星(Uranus)に因んでいます。天王星は,ハーシェル以前にも観測されていましたが,惑星とは認識されていませんでした。ハーシェルも当初は,それが新天体であると認めましたが,彗星だと考えました。しかしその後の観測から,彗星だと仮定して求めた軌道と観測結果が一致せず,最終的に惑星であることが分かりました。
クラプロートは,自身の実験結果について次のように記しています。-「私は,これまで黒色閃亜鉛鉱(black blende)ないしピッチブレンド,つまり多くの人から偽方鉛鉱(pseudo-galena)と呼ばれてきた独特の発掘物を分解し,新しい金属物質を発見した。しかし,本稿の記述が進んで,新しい名称が必要なことがはっきりするまでしばらくの間,この呼び名で通すことにしよう。」
クラプロートによって分離された黒色粉末は後に酸化ウラン(Ⅳ)であることが判りました。その後,フランスの化学者E.ペリゴが塩化ウラン(Ⅳ)(UCl4)をカリウムで還元し,ウランの単体は1841年に初めて単離されました。
ウランガラスとその再発見
イタリアのナポリ湾を望む丘陵地のポジリポ(Posillipo)で,帝政ローマ期の貴族の別邸宅からモザイク壁画が発見されました。1912年に分析された結果,壁画の緑色ガラスに約1%の酸化ウランが含まれていることと,そのガラスが西暦79年に製造されていたことが分かりました。
ガラスにピッチブレンドを混ぜて黄色や緑色の透明ガラスが製造されるようになったのは1830年代のことです。その後の約100年間,ウランが原子力に利用されるようになる1940年代まで,様々なガラス器が欧米諸国で作られました。現在では民間でウラン化合物を扱うことは難しいですが,当時はガラスを黄色系統の色に着色する方法がほかになく,製造が盛んだった欧州から普及しました。1世紀につくられたポジリポのウランガラスからすれば,ウランガラスの再発見と言えます。
ウランガラスに蛍光現象が見出されたのは偶然からとされ,始めは鑑賞用に器などに使われていました。ウランガラスに紫外線を当てると蛍光が出る原理は,紫外線のエネルギーによってウラン原子の電子が励起され,励起状態から定常状態に戻る際に放出されるエネルギーが波長550㎚の黄緑系統の色調の光であることで説明されます。ウランガラスの蛍光現象は紫外線を可視光線に変える性質で,照明の輝度を高めることができるので,照明器具として使われるようになりました。
日本では,ウランガラスは昭和初期から戦前までの短期間製造されていました。黄色のガラスは,短波長の光をカットし,透過性に優れているので,鉄道車両の前照灯・後照灯や操車場の投光器などとしても使われました。しかし,1941(昭和16)年からはウランの供給が停止されてウランガラスの製造ができなくなり,その後は,二クロム酸カリウム(K2Cr2O7)によって黄色に着色したガラスに変わりました。

黄色の前照灯の例(京阪600系車両)
出典:浪速丹治による”京阪600系区急.jpg”
ライセンスはCC BY-SA 4.0(WIKIMEDIA COMMONSより)
参考文献
ウラン二次鉱物の形成,磯部博志,鉱物学雑誌・第24巻第3号,179~186(1995)
「楽しい鉱物図鑑」堀 秀道著(草思社,2013年)
園部利彦
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