カフェイン

はじめに

カフェイン(Caffeine)はキサンチン誘導体のアルカロイドです(図1)。分子式C8H10N4O2 MW 194.19 白色結晶 融点238℃です。薬理作用は中枢神経興奮作用があり、古くから医薬品として使われてきました。また、嗜好品のコーヒー、紅茶、緑茶にも含まれています。カフェインの名前は「コーヒーの中に入っている」ことに由来します1)


図1.カフェインの構造式

用途と作用機序

医薬品としての効能は日本薬局方によると、眠気、倦怠感、血管拡張作用及び脳圧亢進性頭痛(偏頭痛、高血圧性頭痛、カフェイン禁断性頭痛等)の緩和とされています。眠気はアデノシン(図2)が脳内のアデノシンレセプター(主にA1、および、A2受容体)に結合することによって引き起こされるとされています。アデノシンは生体エネルギーATPの構成要素であり、生体が活動してATPが消費されると、その結果としてアデノシンが脳内に増え、眠気が生じると考えられます。生体が活動すると、眠くなることは通常のことです。しかし、眠いからといって、試験前や仕事がたまっている時等、寝るわけにいかないこともあります。そのような場合に“眠気覚まし“としてカフェインを摂ることがあります。カフェインはアデノシンと構造が似ているので、アデノシンレセプターに結合し、アデノシンが結合するのを妨害します。そうすると、眠気の信号が止められ、眠気を覚ますことができます。


図2. アデノシンの構造式

また、市販の風邪薬の成分にもカフェインがよく含まれています。頭の鈍重感や痛みの症状を和らげる目的とされ、風邪による倦怠感や風邪薬に含まれている抗ヒスタミン薬で眠気が現れることに対抗する意味もあります。通常の風邪(ウィルス性)に効く薬はないので、いわゆる対症療法です。

カフェインの代謝とCYP1A2

カフェインは経口摂取されると、消化管から吸収され、血中ピークに達するのに約30分かかります。主に肝臓の薬物代謝酵素シトクロームP450のCYP1A2により代謝を受け、3種類のジメチルキサンチン(主にパラキサンチン、他にテオブロミン、テオフィリン)に代謝されます。半減期は2〜10時間とされ、半減期が比較的長いことに注意が必要です。寝る前にコーヒーやお茶を飲まないように言われるのはこのためです。シトクロームP450は薬物により誘導(活性が上がる)されます。例えば、タバコを吸う習慣があると、タバコの有害物質を代謝する必要があり、シトクロームP450が誘導されていることがあります。特に、その中のCYP1A2が誘導された場合、カフェインの代謝が早くなります。カフェインを習慣的に摂取している場合も、CYP1A2が誘導され、眠気さましのコーヒーの量がだんだん増えることにつながります。また、カフェインの代謝速度については、個人差や遺伝的な差があります。家族間でもカフェインに強い人と弱い人があります。乳幼児にコーヒーを飲ませてはいけないと言われますが、これは年齢差によるものです。CYP1A2は生後直後ほとんど活性がありませんが、中学生ぐらいになると大人並みの活性になります。それまではコーヒーは控えておいた方が無難です2)

毒性

カフェインを過量摂取すると、悪心、嘔吐、腹痛などの消化器症状、頭痛、不眠、イライラ、興奮などの精神神経症状、動悸、頻脈、期外収縮などの循環器症状が現れます。重症の場合、高体温、肺水腫、横紋筋融解、急性腎不全が引き起こされることがあります。カフェインをよく摂取する人に、悪心、嘔吐、不穏、頻脈があるとカフェイン中毒を疑います。特効薬はなく、循環動態をモニターし、呼吸管理をします。頻脈に対してβ遮断薬プロプラノロール塩酸塩が使われます。血中半減期が長いため、血液透析が有効です1)
血中濃度は、治療域 4〜10μg/mL、中毒濃度 15-20μg/mL 致死濃度 80-180μg/mLとされ3)、経口摂取の場合、中毒量:1〜3g、致死量:5〜50gとされています1)

事故例

カフェインは嗜好品や風邪薬などの医薬品によく含まれますが、エナジードリンクにも含まれていることがあります。特に、眠気さましの効能を謳う場合、カフェインは多量含まれています。アメリカでは2010年頃から、エナジードリンクによる健康被害が社会問題となっています。次に我が国で報告されたカフェイン中毒死の事故例を紹介します5)。20代男性が深夜のアルバイトから帰宅し、自室で横になっていましたが、2時間後に大量嘔吐して、意識不明となりました。その後、家族が帰宅して発見し、救急搬送されましたが、そのまま死亡しました。死因究明のため、法医解剖が行われました。その結果、損傷はなく、脳は軽度浮腫状、諸臓器はうっ血を認めましたが、重大な病変はありませんでした。胃内容は灰黄色の顆粒を含む液体、尿は淡黄色透明でした。薬物分析により、カフェイン濃度は血液中182μg/mL、尿中71μg/mL、胃内容中10700μg/mLでした。カフェインの血中濃度は致死濃度であり、死因はカフェイン中毒と診断されました。本件のカフェインがどのように摂取されたかは不明ですが、胃内容中の濃度が高いことから、経口摂取と考えられます。カフェインはエナジードリンクなら、1本あたり36〜150mg、また、サプリメントのカフェイン製剤では1錠あたり、100〜200mgが含まれています。短時間でカフェインを経口摂取した場合、3gで死亡するという報告があります4)。そうすると、20本のエナジードリンクや15錠のサプリメントの服用で死亡することもあります。

終わりに

カフェインはコーヒーをはじめとする嗜好品や医薬品の風邪薬に含まれるありふれた化学物質です。カフェインはコーヒー1杯に80mg程度含まれています。1日あたりの安全な摂取量は400mg程度と考えられています。特に、エナジードリンクは医薬品や医薬部外品でなく、清涼飲料水に分類され、コンビニや自販機で気軽に購入できます。しかし、比較的多量のカフェインが含まれていることがあります。また、広く飲まれているオロナミンCにも1本当たり19mgのカフェインが含まれています。カフェインの過剰摂取には注意したいものです。

(参考)
1. 上条吉人. カフェイン. 臨床中毒学 第2版. pp.149-155. 医学書院. 2023.
2. 質疑応答概要. 内閣府. 食品安全委員会. 食品を科学する―リスクアナリシス(分析)連続講座― 第4回. https://www.fsc.go.jp/fsciis/meetingMaterial/show/kai20141002ik1
3. Schulz M, Schmoldt A, Andresen-Streichert H, Iwersen-Bergmann S. Revisited: Therapeutic and toxic blood concentrations of more than 1100 drugs and other xenobiotics. 24:195,2020. https://doi.org/10.1186/s13054-020-02915-5
4. Sepkowitz KA:Energy drinks and caffeine-related adverse effects.JAMA,309(3):243-244,2013.
5. 高山みお ら. カフェイン飲料・製剤の過剰摂取によるカフェイン中毒事故の1剖検例.日本アルコール・薬物医学会雑誌51(3), 228-233. 2016.

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上村 公一

東京医科歯科大学名誉教授、もと高校教諭(理科・化学)。専門は法医学、中毒学。テレビドラマや小説の法医学監修をしてきた。

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