ときに緑色に美しく光るウラン

元素記号U、原子番号92の元素、ウラン。紀元前後頃からウランはガラス製品に使用されていたようである。ナポリで発掘されたローマ時代のモザイクガラスの緑色の部分を分析した結果、約1.5%のウランを含有しており、これが初めてのウランガラスといわれている。しかし、元素としてのウランが発見されたのは比較的新しく、ドイツのクラプロートが閃ウラン鉱(写真)の中から1789年に発見したとされる。彼が、この新元素の名前を、その当時(1781年)発見された天王星ウラナス(Uranus)にちなんで、ウラン(Uran)と名付けた。

閃ウラン鉱は(ピッチブレンド)は天然でウランを含む鉱石として産出するがその中にはカルシウム、マグネシウム、バリウム、銅、アルミニウム、ケイ素、希土類元素などの酸化物や炭酸鉱物も含まれている。ウランが放射性崩壊した結果として少量のラジウムも含まれる。ウランを含む鉱物の種類は多く、その他にリン灰ウラン石やリン銅ウラン鉱もある(写真)。

 

(上)ピッチブレンド(閃ウラン鉱)
Template:Farhanによるhttps://commons.wikimedia.org/wiki/File:Pichblende.jpg「Pichblende」ライセンスはCC-BY-SA-2.5 

 

(上)燐灰ウラン鉱 -フランス、オトゥーン産
写真提供ご協力:鉱物たちの庭HP管理人

 

(上)リン銅ウラン鉱 -コンゴ、コルウェジ産
写真提供ご協力:鉱物たちの庭HP管理人

 

キュリー夫妻は、ベクレルの研究成果に影響を受け、ウラン鉱石から当時未知のラジウムとポロニウムの抽出を行い、元素の発見に成功した(1898年)。このキュリー夫妻の成果は原子物理学の基礎を築くのに大きく貢献し、その後の原子力の時代の幕を開けに影響を与えたといえる。その後、世界ではじめて人工的に原子炉が臨界に達する(核分裂を起こす)ことができたのは、1942年、米国シカゴ大学とされる。

 

 

実験1 鉱石やガラスの中のウランをみつけてみよう

 

ウランを含む鉱石やガラスに、紫外線を当てると黄緑色の蛍光を観察することができる。これは、ウランガラスやウラン鉱石中に含まれているウラニルイオンUO22+またはそれを含むウラニル化合物が蛍光を発する性質を持つからである。ウラニルイオンは、U6+イオンにO2-イオンが2つ配位した、直線構造の錯イオンとして知られる。

ロシア皇帝のウランガラス酒杯(ゴブレット) フェドロフスキー社、マルツォフスコイエ社
(左)紫外線を当てる前 (右)紫外線を当てて蛍光(発光)している様子
写真提供ご協力:妖精の森ガラス美術館

 

いわゆるブラックライト(紫外線ライト)をウランガラスに照射すると約550 nmの波長の緑色の光を発する。最近ではビーズやブレスレッドなどのアクセサリー用のパーツショップでウランガラスを少数でも入手することができる。写真は岡山県の妖精の森ガラス美術館で展示されている、ロシア皇帝のウランガラス酒杯である。紫外線を当てると綺麗に緑色に光っているのがわかる。

 

 

実験2 海水からウランを捕集する

 

海水には地球に存在するほとんどの元素が溶けている。もちろんその濃度はごく微量のものもある。ウランの量は海水1トンあたり約3.3 ㎎ 含まれていて、カチオン種では13番目に多い元素で、鉄や銅よりも多く海水に溶けていることになる。量子科学技術研究開発機構(旧日本原子力研究開発機構)では、グラフト重合で機能化させた補集材(アミドキシム型捕集材)に工夫をして、海水からウランを回収できる技術を開発した。この補集材を用いるとウランだけでなくその他の低濃度の希少価値のある金属資源を効率的に吸着することができるのだ。

この画期的な捕集材は放射線グラフト重合という方法で、次のようにつくられる。ポリプロエチレンと呼ばれるプラスチックのフェルト状の布に放射線(電子線)を当てて分子の反応性を高め、そこにアクリロニトリルを接触させてアクリル系の官能基を導入する。更に化学処理を加えて「アミドキシム基」を化学的にまるで“接ぎ木”のように持たすことで、ウランを吸着できる性質を発現できる。この新しい材料には次のような特徴があり、ウランを含むレアメタルの捕集に期待が膨らむ。

(上)ウラン捕集材となるポリマーのデザインのキーとなる放射線グラフト重合の工程
情報・写真提供ご協力:量子科学技術研究開発機構 先端機能材料研究部 瀬古典明様

 

(上)モール状の捕集材の写真
情報・写真提供ご協力:量子科学技術研究開発機構 先端機能材料研究部 瀬古典明様

 

 

(上)実際の海洋捕集実験の様子
情報・写真提供ご協力:量子科学技術研究開発機構 先端機能材料研究部 瀬古典明様

 

 

【1】海水中の極微量の溶存元素であるウランを選択的に吸着できる。

【2】特定の元素ウランを速く、たくさん吸着できる。

【3】自然海流や波力を有効に利用しながら吸着できる。

【4】海洋環境での耐久性に優れ、環境を汚染しない。

【5】吸着したウランやバナジウムは樹脂を塩酸で洗うことにより、簡単に回収できる。塩酸の濃度を変えることにより、ウランやバナジウムを別々に分離回収できる。

 

 

 

参考文献・参考サイト

ウランガラス同好会HPのホームページ

http://uranglass.gooside.com/index.html

 

桜井弘「元素111の新知識(ブルーバックス)」、講談社、1997年

 

鉱物たちの庭のホームページより 燐灰ウラン鉱および燐銅ウラン鉱

http://www.ne.jp/asahi/lapis/fluorite/gallery7/522autun.html

http://www.ne.jp/asahi/lapis/fluorite/gallery2/102torbe.html

 

日本原子力研究開発機構 海水ウラン回収技術の現状と展望

https://www.jaea.go.jp/03/senryaku/seminar/s09-3.pdf

 

環境研ミニ百科第29号 海水の中からウランを採る

-下北の海で捕集材料の性能試験進む-

https://www.ies.or.jp/publicity_j/mini_hyakka/29/mini29.html

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山﨑 友紀

大学教授として化学や地球環境論の講義を担当。水熱化学の研究を行いながらサイエンスライターとしても活動中。趣味はクラシックバレエ。