「太陽のエネルギー」が愛称になった 防府市青少年科学館「ソラール」

防府市は昔から雨が少なく、塩田などの太陽の恵みを受けた産業を中心に発展してきた歴史があります。そんな土地の特性から、防府市青少年科学館は、スペイン語で「太陽のエネルギー」を意味する「ソラール」を愛称に、太陽の恵みと生命を考える「自然と人間の調和」をメインテーマに掲げた科学館として平成10年に建てられました。

常設展示に加えて、年間、様々な企画展や科学教室、サイエンスショー、工作などを実施し、日々、「科学を『やさしく、ふかく、たのしく』」をモットーに科学普及活動を行っています。

 

常設展示室

当館の常設展示は、鏡や万華鏡、光の三原色などの『光の科学』の展示をメインに、科学の原理や原則を参加体験型により学習できます。他にも、6連装太陽望遠鏡、地球誕生46億年の歴史を映像や壁画で概観する回廊展示室、防府の自然環境を紹介するコーナーなど、太陽に関連する展示を中心に構成されています。

生命の回廊(壁画)

 

6連装太陽望遠鏡

当館のテーマの1つである『太陽』は、元素のヘリウム(He)の命名由来となった天体です。当館が有している6連装太陽望遠鏡は、黒点やプロミネンス、フレアなどの太陽で起こる様々な現象を観察することができます。晴れた日には、太陽望遠鏡から太陽のリアルタイム映像を館内に映し出し、日々刻々と移り変わっている太陽活動を来館者にご紹介しています。

6連装太陽望遠鏡

 

柏木体温計

今ではほとんど見かけなくなった「水銀体温計」は、水銀(Hg)が常温で液体の金属であることがわかる、最も身近なものでした。明治から大正にかけて、国内産安全マッチの開発・製造などで地元に貢献してきた防府の発明家「柏木幸助」は、国内初の留点体温計の開発・製造に成功し、国内外へ「柏木体温計」として販売してきました。

柏木体温計(ゼヒ体温計 昭和初期)

ソラール屋外の広場には、地元の偉人として、等身大の柏木幸助の銅像が建っています。また、館内の一角には柏木コーナーを設け、柏木体温計を一部(2代目が昭和期に製造したもの)展示し、その偉業を今に伝えています。

柏木幸助銅像

 

サイエンスパークのサクラ

日本では、昔から花見の文化があるように、サクラは日本人の好きな花でよく上位に入ります。山口県内でも多くのサクラが植えられた、サクラの名所と呼ばれる場所がありますが、そのほとんどが、ソメイヨシノなどの同種であることが多いようです。

当館の屋外広場「サイエンスパーク」には、数は多くありませんが、17種類のサクラが植えられており、その内、現在11種あるといわれているサクラの野生種(野生種の種類数は諸説あります)が、なんと8種類含まれています。県内でもちょっと珍しい、「野生種の種類が多い、サクラの名所」なのです。毎年、春にサクラの講座を行い、それぞれの特徴や、そのサクラが何のサクラの雑種なのかを調べるなど、科学視点でサクラを観察しています。

花のない時期でも、樹形や葉の違いを比較して調べることができます。食べられるサクランボのなる種類もあり、毎年、職員と野生の鳥で奪い合いになっています。

 

特別展「国際周期表年特別展」

2019年の国際周期表年から全国を巡回してきた「国際周期表年特別展」は、当館が最後の巡回館として、2021年1月23日~5月16日の会期で開催しています。
2021年4月1日からは、本展と関連性のある「鉱物」をテーマにした企画展を同時開催しています。

国際周期表年特別展会場内の展示

今回、巡回展示物とは別に展示した、実物の元素周期標本は、大人の方はもちろん、小さなお子様までが熱心に見入ってました。やはり実物資料は、来場者を惹きつける魅力があります。

実物の元素周期標本 (協力:株式会社高純度化学研究所)

2021年4月1日から、少し難しいイメージのある周期表や元素について、小学生からでも楽しく学んでいただこうと、来館者向けに周期表を使った「ナゾトキ」を作成し、実施しました。問題用紙にある8問のナゾを、展示室内の展示と当館制作の周期表をヒントに解きます。それぞれの№のナゾは、現在の元素118種の内、何れか1つの元素がこたえとなっています。興味のある方は、以下の問題用紙を見て、ぜひチャレンジしてみてください。

当館制作の周期表おもて

なお、このナゾトキは、周期表の内「ナゾのこたえはこれだ!」と思う元素に、各№のシールを貼って解答する、鉛筆やバインダーを使わない仕様になっています。

特に、№3、№4、№7のナゾは、巡回展示物の展示がヒントになっています。他のナゾは周期表を見れば解くことができます。ちなみに、№3は「お魚周期表」、№4は「中国語周期表」、№7は「江戸版現代版元素記号比較」がヒントです。展示を見なくても解けるかも!?

もちろん、どうしてもナゾがとけない小さなお子様向けに、館内にヒントコーナーもあります。むしろ大人の方がちょくちょく見られているかも!?

ヒントコーナー

8問すべてのナゾが解き終わったら、最後に、周期表裏の「最後のナゾ」も用意しております。こちらは、自宅でゆっくり、調べ学習用として解いていただきます。

当館制作の周期表うら

この機会に、展示やナゾトキで周期表をじっくり見て、元素を楽しく学んでいただけるとうれしいです。

 

 

施設名  防府市青少年科学館・ソラール
ホームページ http://www.solar-hofu.sakura.ne.jp
特徴 防府市青少年科学館・ソラールは山口県防府市にある科学館です。
科学技術に関する知識の普及および啓発を図ることを目的に、1998年(平成10年)にオープンしました。太陽をテーマとしており、スペイン語で太陽のエネルギーを意味する“ソラール”という愛称で親しまれています。6連装太陽望遠鏡で太陽の黒鉛やフレアを観察することができます。体験型の常設展示、企画展や科学教室、サイエンスショー、工作なども実施していますので、科学をやさしく、ふかく、たのしく学ぶことができます。
時間 9:30~17:00(ただし,入館は閉館の30分前まで)
休館日 休館日:月曜日(月曜日が祝日にあたる場合、翌平日が休館日)
※このほか、臨時休館日、年末年始休館日等がありますのでお出かけ前に
防府市青少年科学館公式ホームページでご確認ください。
料金 観覧料(通常期):
子ども(小・中学生) 200円
大人(高校生以上)  310円※20名以上の団体は
子ども(小・中学生) 100円
大人(高校生以上)  200円

※未就学児(乳児・幼児)無料。
障がい者手帳をお持ちの方とその介助の方お1人は無料。
※企画展によって変更する場合があります。

住所 〒 747-0809 山口県防府市寿町6-41

アクセス 山陽自動車道から車で10分
九州方面から・・・防府西IC
広島方面から・・・防府東IC防府駅から徒歩で15分
駐車場

設備等

無料駐車場あり。普通車70台、 バス7台

ミュージアムショップあり。

 

*この記事は2021年4月16日現在のものです。

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岩下 貴文

防府市青少年科学館 学芸員。来館者の反応を楽しみにしながら、様々な分野の企画展開催等の科学普及活動に携わっている。自覚のない熊本訛りをよく指摘される。